警察官は夜に嘘をつく~警察官の裏切りを追った僕たちの72時間~

❹📖探偵小説🖋️代表が作家👀短編🔖1分で読める

「対象は現職の警察官、妻からの依頼です」
依頼書に目を通したとき、僕たちの空気が一瞬だけ張りつめた。

警察官の浮気調査――つまり、張り込む先は警察署。
下手に動けば職質される。しかも対象は「警察という内輪」の人間。
いつもの浮気調査とは、わけが違った。

初日。朝7時、警察官宿舎の裏手に車を停め、対象の男が出てくるのを待つ。
制服ではない。スーツに警察手帳。手慣れた足取りで警察署の裏口へと入っていく。
あたりは警官だらけ。僕たちは張り込み車内で身を潜めながら、呼吸を殺した。

三日目。やっと“変化”が訪れる。
夜19時。勤務を終えた彼が、目黒方面に向かう。尾行開始。
途中で合流したのは、30代前半と思しき女性――落ち着いたショートカット、指に指輪はない。

ふたりは警察官同士のようだった。言葉遣いと立ち振る舞いが“それ”だった。
彼らは駅ナカのバーで軽く飲み、タクシーに乗って彼女のマンションへと消えていった。

僕たちは交代で張り込んだ。
翌朝、彼が出てきたのは6時半。シャワーを浴びたような髪で、ノータイのシャツ。
浮気は、確定だった。

翌週も同じ流れ。会う曜日も、宿泊先も変わらなかった。
僕たちは彼女の身元も調べた。現職の警察官で、別部署所属。
“W不倫”の構図が見えた瞬間、依頼者の妻の涙が浮かんだ。

最終日、決定的な証拠を押さえた。
手をつなぎ、ラブホ街に吸い込まれていくふたり。
会話、映像、入室時間、退室時間。
法律上、争うには十分な材料だった。

調査報告書を手渡した日、依頼者は声を殺して泣いた。

「本当に……ありがとうございました。こんな気持ち、どう処理していいか……わかりません」

僕たちは黙ってうなずいた。
探偵は、人の心を裁く仕事ではない。ただ、真実に光を当てるだけだ。

真実を知ってもなお、生きていくしかない。
その覚悟の背中を、僕たちは今日もそっと見送る。

✍️ 作家の言葉

警察官――社会の秩序を守る象徴であり、私たちが最後にすがる“正義”の砦。
けれどその制服を脱いだとき、彼らもまた、迷い、傷つき、過ちを犯す、ただの人間でしかない。

正義を託された者が、家庭の中で不実に揺らいだとき、
崩れるのは家族の信頼だけではない。
「正義」そのものの輪郭が、にじんでいく。

だからこそ、僕たち探偵は“暴く”のではなく、
沈黙の中にある真実を、ただ静かに“映し出す”。

真実とは、裁くための刃ではない。
それは、立ち止まった誰かの時間を、もう一度動かすための“光”だ。

苦しみの中にある依頼者が、自分自身をもう一度信じられるように。
壊れかけた日常に、小さな希望の綻びが生まれるように。

探偵という仕事の本質は、
“心の再起動”に寄り添うことだと、僕は信じています。

――真実の先に、赦しと再生の物語があることを、どうか忘れないでほしい。

–Manabu.US