①前編「疑いの向こうにあったもの」~夫の真実の愛~

❹📖探偵小説🖋️代表が作家👀短編🔖1分で読める

疑いの向こうにあったもの

~浮気を疑った妻が知った、夫の真実の愛~

「最近、夫の帰りが急に遅くなって……」

30代後半の女性は、心細げな表情でそう言った。

スマホには既読スルー、残業という割に領収書のない日々。浮気ではないかと、心が不安でいっぱいだという。

「本当のことが知りたいんです。たとえ裏切られていても…」

その覚悟に、私たちは調査を開始した。

だが──浮気の兆候は一切見つからなかった。

彼が立ち寄っていたのは、繁華街の居酒屋、早朝の清掃現場、コンビニの深夜シフト。日曜日には建築現場での片付け作業。
すべて、短期バイトの掛け持ちだった。

財布の中のレシートは、旅行代理店のもの。メモには「Hawaii」の文字。

1週間の調査で、私たちは確信した。

この男は、誰のためにも黙って汗を流していた。

報告書を渡す日、彼女は封を開ける手を震わせていた。

「浮気じゃ……ないんですね」

ページをめくりながら、彼女の目に涙が滲んだ。

「……バカだなぁ。そんなの、言ってくれたらよかったのに」

彼女は微笑んだ。こんなにも、夫が自分を想ってくれていたという事実に、深く打たれていた。

後日、彼女から一通の写真付きのハガキが届いた。
ハワイの浜辺で笑い合う夫婦の姿。

「調査費は少しかかりましたが、それ以上の“信じる理由”を得られました。本当にありがとうございました」

探偵の仕事は、必ずしも裏切りを暴くためじゃない。
ときに、それは“信じてもいい”という確証を、静かに渡すための行為だ。

真実は、見た目とは違う場所にひっそりとある。
それを見つけることが、俺たちの仕事だ。

そして今日もまた、誰かの疑いが、愛に変わる瞬間を見届ける。
それは、調査員にとっても、かけがえのない報酬なのだ。
②後編「この手をもう離さない」前作の続編としてのハワイ旅行後のエピローグ